静寂の美
2014年8月28日
数日前までの暑さはどこへやら・・・
この数日すっかり秋めいて、湯気の立つ温かいお茶が恋しくなってきました。
茶の湯では、釜から沸き立つ湯気の音を、松風と呼びます。
ー室内に満ちる松風の音ー
蓋を取り、柄杓から水を注いだ瞬間、それまで沸き立っていた釜は一瞬沈黙をし、
刹那にして室内は閑寂な空気に包まれます。
その瞬間が、わたしはたまらなく好きです。
ところが、
現代はまるで、「静寂」という言の葉を失ってしまったかのよう・・・
喧騒の中に大切なものを忘れてしまった時代のように思えてなりません。
芭蕉が「古池や蛙とびこむ水の音」と詠んだのも、
水の音と表現しているものの、蛙が飛び込んだ後の静けさの中に、
沈黙の音・沈黙の響きというものを感じていたのではないでしょうか。
禅の言の葉にも、
「鳥鳴いて山更に幽(しずか)なり」とあります。
鳥が放つ一声が、山の静けさを一層深いものにしているように思います。
こうした仏教や禅に裏打ちされた静寂の文化・沈黙の文化は、
日本伝統文化の大きな特徴の一つであったはず。
もうすっかり過去のものとなってしまったようで寂しく感じるのは、
わたしだけでしょうか。