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庭フジによせて

庭フジによせて
2013年6月21日

誰にも忘れられぬ想い出があります。
人と人には別れがあるけれど、想い出は生涯胸の中にしまっておけます。
時にはそれを、一つひとつ想い出の小箱から取り出して懐かしむ・・・
「うしろは振り返らない、前だけ見ていきていく」という人にとっては、
もしかしたら理解できないことかもしれません。
しかし、
その中であらためて感謝をしたり、その時の真実に気づかされたりすることもあるのです。
今の自分があるのは、過去に出会ったすべての人のおかげ、と思っています。
日々の生活に追われていたり、新たなものへ心トキメカセテいると、どうしても忘れてしまいがち。

 

    人さまから戴いたご恩は、墓場までもっていくんじゃぞ

 

亡き祖母の言葉が、よみがえります。
先日、ご年配のお客さまがお見えになりました。
お菓子をお買い上げ戴いたあと、じーっとカウンターの植木鉢をご覧になると、
ハラハラと涙を流すではありませんか!
わたしは驚いて「どうされました?」と尋ねると、

 

「亡くなった主人がね、この庭フジが好きでねぇ。その中の一つに私の名前をつけたの。
そうして、病院のベッドで亡くなる時、
あぁ、今一度家に戻って庭フジを見たかった・・・ってね。。
わたしは主人を、どんなことをしてでも我が家に連れ帰って、庭の見える畳の上で
最期を迎えさせてあげればよかったって、今でも後悔してるのよ。
でもね、今このフジを見て思った。わたしが一生懸命育てることが供養かしらって」

 

わたしはもらい泣きをしながら、頷きました。
想い出は、人の心を慰め、生きる勇気さえ与えてくれるものなんだということを、
あらためて痛感した、そんなできごとでした。

 

   亡き人の面影うかぶ庭フジの やさしき姿しばしとどめん

 

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