松屋から、四季折々の情景をお伝えします。

線香花火
2013年5月18日

幼い頃、祖母と過ごす一番好きな時間は、川原での線香花火。
揺らさぬよう、落とさぬよう、瞳こらして見つめていた日が、つい昨日のように鮮やかに甦ります。
最期に祖母と線香花火に火をつけたのは、中学三年の夏休みでした。
祖母はいつものように、「揺らさんようになぁ」と言ってマッチで火をつけました。
「ばあちゃんは線香花火を見るたんびに、人の命とおんなじじゃなぁと思うんじゃ」
わたしが、「えーーっ?!人の命は、こんなに簡単に終わらないよ」と言うと祖母は、
「いいや、人とていつなん時死んでしまうかわからん。交通事故にあったり、不治の病にかかったりと、
予想もしない突然の不幸は、この世にたくさんあるじゃろう? そうした不幸に逢わずとも、
やはり人の命は永遠ではない。ばあちゃんもいつまで生きられるか、わからん。
明日かもしれんし、5年後かもしれんが、必ず死は訪れる。みな平等に、な。
お釈迦さまはそれを、 -諸行無常- とおっしゃった。
だから、今日が最期かもしれんってな、ばあちゃんは毎朝そう思う。
そうして夜になるとな、ああ!今日も無事に生きられた、と手を合わせる。
有難くて、ありがたくて、たまらなくなるんじゃ。
年よりだから…ではないぞ。誰しもみな、そう思って生きなければのぅ。
一度きりの人生じゃてな。一日を、今を、一瞬を大切にすれば、いのちは輝く。
ほれ、お前がいま手に持っている、線香花火みたいに…な」

 

揺らさずに、大切にたいせつにと握っていた線香花火は、燃え尽きる刹那、最期の輝きを放ち、

 

   ジュッ!

 

それはまるで命をまっとうしたかのような、清々しい音でしたー

 

   今を生き今よ輝け我がいのち 線香花火と燃え尽きるまで

 

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