まぼろし
2013年1月24日

厳しい寒さが続いておりますが、みなさま如何おすごしでしょうか。
先日の「大寒」から節分ころまでは、一年の中でもっとも寒い時季。
指の先はひび割れ、身体が縮こまるせいか肩がこり、洗濯物が乾きにくい、etc…。
雪の降る日に生まれたわたしでも、冬が苦手なのはそうしたことがあるからなのです。

 

一方、その寒さに恩恵をうけているものも少なくありません。
「寒仕込み」などは、その最たるもの。
この頃に汲んだ水は、その冷たさから雑菌がすめないほど清いと尊ばれ、
その水でお醤油やお味噌、そして日本酒などの仕込みが行われます。
じっくりと熟成された味わいには、「厳しい寒さ」いうエッセンスが入っているのですね。
また、この頃いただくお便りが 寒中見舞い。

 

    寒くて、風邪などひいてはいないか。

    寒さで、外に出られず困ってはいないだろうか。

 

そうした相手を想いやる心で、一文字一文字したためる手紙や葉書には、
書き手の掌のぬくもりが感じられるものです。
逢わずとも、声さえ聴かずとも、互の心が寄り添える…なんて素敵なことでしょう!

実は先日、わたしはそれを実感したばかり。
なかなか逢えない友人からの葉書や手紙を、たくさん戴きました。
その中の一つをご紹介します。

 

    初雪に、白妙の衣を着た神宮の森をぬけて、美術館に行って参りました。
    亡きおばあ様を偲ばれての「幻」。いつも以上の渾身の作品に心打たれました。
        (中略)
    書展のお知らせ、ほんとうに有難うございました。
    ながいことお逢いしておりませんが、いつも気持ちは通じていると感じています。
    エッセイ、書、そしてお店のお仕事とお忙しいとは思いますが、頑張って下さいね。
    再会を楽しみにしております。

 

雪の降る寒い中・忙しい中を、足を運んでくれた女友達の葉書を手にした時、
わたしの胸は温かいものでいっぱいになり、気づけば頭を下げていました。
他にも、「今、まさにあなたの作品の前におります」からはじまる、
熱くて心のこもった長いメールを、会場からダイレクトに送って下さった人もいました。

 

また、お忙しい中足を運んで戴いたうえに、フェイスブックに作品の写真を載せ下さった
ジャパニストの編集長・高久多美男さん。
ほんとうに有難くて、ありがたくて、言葉になりません。
そうした多くの友人を持てたことの倖せを、わたしは今回あらためてしみじみと噛み締めました。
そしてこれもみな、亡き祖母を偲んで書いた作品、「幻」のおかげだと感じています。
「行きたかったのに、仕事の都合上観ることが叶いませんでした」といって戴いている人の中に、
フェスブックをされていない方もいらっしゃるということなので、新たに画像を載せました。

 

なお、近々写真家が撮影したネガが届きますので、そのさい画像を入れ替えたいと思います。

拙くも、祖母の大きな温かい胸の中に抱かれているかのような作品になったかな~と、
秘かに自負しています。

 

           筆先に 祖母のおもかげ 偲ぶまぼろし

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