松屋から、四季折々の情景をお伝えします。

筏のお話
2012年11月29日

とらわれない心を持つー
常に心がけているつもりでも、なかなかどうして難しいものです。
ふっと、亡き祖母が教えてくれた「筏(いかだ)のお話」を想い出しました。

 

昔むかし、お釈迦さまに一人の弟子がたずねました。
「お釈迦さまはいつも、どんなものに対しても こだわる ことはいけないと仰っておられます。
では、お釈迦さまの教えに対しても同じことが言えるのでしょうか」
お釈迦さまは、ふか~く頷かれて言いました。
「とても良い質問です。これはとても大事なこと故、みなもよく聞いておきなさい」と言われ、
ひとつの喩(たとえ)話をお話になりました。
「旅人が旅している途中、大きな川に出くわしました。目的地に行くには、その川を渡るか、
川づたいに歩いて行くしかありません。
ところが、川のこちら側は岩がゴツゴツして歩きにくく、川の向こう側は草地で歩きやすそうです。
向こう側に渡りたいと思うのですが、川は深く流れは急で、渡し舟も見当たりません。
そこで旅人は、川を渡るために筏を思いつきました。
流木を集め、つる草で縛って作った筏に乗り、旅人は無事向こう岸に渡ることができたのです。
ふむ、この筏は役に立つ。捨てるのは惜しい。自分で作ったのだから持っていこう。
そう考えた旅人は、筏を頭にのせて歩いて行ったのです。
さあ、弟子たちよ。この旅人をどう思いますか。この旅人は本当に筏を生かしたといえるでしょうか」
弟子たちは口々に言いました。

 

 「それは違います」
 「筏は置いていくべきです」
 「持っていっても重荷になるだけです」

 

お釈迦さまは言いました。

 

 「そうです。旅人は筏を岸に引き上げるか杭につないで行けばよかったのです。

 

すると後からくる誰かの役に立つ。旅人が身軽に旅を続けてこそ、筏は用をなしたといえるでしょう。
筏に対する とらわれ を捨てれば万事うまくいったのです。

 

弟子たちよ、どんなことにも とらわれない ことが一番の要です。
それは、わたしの教えであってもそうなのですから、それ以外のものはなおのこと。
常に我が身を振り返り、とらわれないように努めなさい」

 

    お釈迦さまのお話を通して、祖母の教えがじんわりと胸に沁み入ります。

 

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