秋の味覚ー
その名の通り、秋は本当に美味しいものが盛りだくさん!
栗・松茸・さんま・りんご・柿など、数え上げたらきりがありません。
そんな中、大好きだった祖母を想い出す果物があります。
それは、無花果(イチジク)。
祖母の家には、それはそれは大きなイチジクの木がありました。
完熟をそのまま食べるのが美味しいのですが、生のままでは日持ちがしません。
そこで祖母は、ハチ蜜に漬け込む方法をあみだしました。
それを瓶詰めにし、トーストしたパンにつけて食べたり、お茶や紅茶のスイーツとして愉しみました。
ところがー
観光で鶴ヶ城に立ち寄る方などが、たわわに実ったイチジクについ手をのばし。。
ということが多くなり、完熟を待ってとろうとするころには、無くなってしまうのでした。
わたしと叔母は、「とるべからず」の張り紙をしようか、いや立板に書こうなどと言い合っていると、
祖母は、
「いいじゃぁないか。美味しそうに実っているものだから、思わず手がのびるんじゃろう。
手塩にかけたものが、誰にも見向きもされずにおるよりも、そうやって手をのばされ、
美味しく食べてもらえる方がずっと倖せじゃ」といって、にこにこ笑うばかり。
不思議なことに、いつしか叔母もわたしも、祖母と同じような気持ちになっていました。
この季節になると、あのたわわに実ったイチジクの実が、祖母の微笑みと共に
懐かしく想い出されるのです。