先日、誠実そうな青年のお客さまがいらっしゃいました。
ひと通り商品をご覧になられても、不安そうに迷い決めかねておられるようでしたので、
「大切な方へのご進物ですか?」と尋ねると、「はい。結婚相手の両親へ挨拶にいくので…」と。
実はー 有難いことに当店には、気を遣う進物をお求めになる方がとても多いのです。
そうした時はまず、相手のお好みをお訊きしています。甘党か否かー
甘党であれば、迷わず羊羹をお薦めします。
黒糖・柚子・大納言の三種があり、大小いずれかの大きさ・本数を選んで戴きます。
ご予算が許せば、何といっても木箱入りがお薦めです。
家族が多い場合は、季節感のある上生菓子も。煉切・求肥・鹿の子などの彩り豊かな詰め合わせです。
甘党ではない・好みが解らない・お子さんや若い方もいるという場合にお薦めしているのは、カステラ。
しっとりした食感と、飽きのこない美味しさは、多くの方に悦ばれています。
では、どら焼きやきんつば、さくら餅や草もちなどはダメなの?…いえいえ、そんなことはありません。
ただ、そうしたお菓子は普段お茶菓子として召し上がっているものですよね?
ここ一番!という時には、和菓子の中で高級とされている羊羹やカステラをお届けすることで、
お持ちになる方の心遣いが伝わる…と考えています。
大切な人への贈りものー そのお気持ちをお手伝いさせて戴けたら…と。
二度目・三度目の訪問の際には、相手の方のお好きな物や、市外なら栃木の名物でもある鉱泉煎餅をお持ちになることで、またまた心遣いを感じて戴けるのではないでしょうか。
さて、先のお客さまはといえば…カステラを選ばれてお買い上げになり、
「助かりました。知人にすすめられこちらに来て良かったです」と話されました。
「和菓子は、人生の節目節目に寄り添っていくものですから、これを機に、どうぞ末永くお付き合いを
させて下さいませ」と申し上げると、「有難うございます!また相談にのって下さい!」と仰って、
入ってこられた時とは別人のように、背筋を伸ばし意気揚々と帰って行かれました。
商売をさせて戴く中、こうしたコミュニケーションが、何より嬉しいものです。
若きカップルの末永いお倖せと、やがて生まれてくる赤ちゃんが健やかに成長されることを祈りながら、
お車が見えなくなるまでお見送りをした、朝のひとコマでしたー