松屋から、四季折々の情景をお伝えします。

名残りの花
2011年8月23日

悲しみに涙する夜があっても、朝日を浴び朝露をまとった花をみると…
いつの間にか笑顔になっているから不思議です。
そしてその花が、可憐で小さき花であればあるほど愛おしく思えるのは、わたしだけでしょうか。

 

数年前ー
一枚の葉書が届きました。
「昨年、奥さまから戴いた種をまきました。芽が出て、ツルがのび…とうとう花が咲きました!
嬉しくて嬉しくて、思わずシャッターをきりました。奥さまの笑顔が、浮かびます」
葉書に写し出されていたのは、真っ白な一輪の花。清らかで可憐な、朝顔でした。
「悲しみも、苦しみも嘘のように吹き飛んで…しあわせな朝でした。有り難うございました。」
最後の一行に、どれだけ感動したことか。“有り難う”はわたしが言う言葉、と思いました。
花って、ほんとうに不思議な力を持っていますね。

 

ツタンカーメンの棺が初めて開かれた時、
その上には形を保ったままの矢車草が一束置かれていたといいます。
わずか18歳で亡くなったツタンカーメンのために、幼き王妃アンケセナーメンが最後に摘んだ花。
三千年の時を超え、王妃の悲しみと想いが伝わりくるような気がします。
王墓の発見に生涯をかけたハワード・カーターが、きらめく黄金の品々よりも、
何よりこの花を愛したというエピソードに、深い感銘をうけました。
花には、底知れぬパワーがあるのだと思います。
そして、どんなにちいさくとも、そのひとつひとつに命が宿っている…と。

あの朝顔が観たいー  そう言って下さるお客さまの期待に答えるべく、数年振りに種をまきました。
仕事や雑用に追われ、まく時期が遅くなりましたが、日々ツルは伸びています。
盛夏の花ならず、夏を名残惜しむ花…となりそうです。
これもまた、風流かもしれませんね。

 

    立秋を過ぎて咲くのもいとおかし 名残りの花と人は呼ぶかな

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